醤油は使わない。優しくてまろやかでうま味のある塩きんぴらがビールに合うのです

ごはん

子供の頃、きんぴらごぼうが苦手だった。理由はしょっぱいから。それもただしょっぱいというのではなく、醤油を煮詰めまくって作ったような、トゲトゲした塩辛さがイヤだった。これは私の育った地域(東北)のせいもあるかもしれない。

地元の大人たちはどんなものにも醤油をぶっかけるのである。塩コショウで炒めた野菜にも、肉じゃがにも、魚の塩焼きも、漬物にすら普通にドバドバかけていた。子供の頃はそれが普通だと思っており、私も真似して醤油をかけていたので、当時はすっかり舌が麻痺していたと思われる。

が、そんな醤油中毒気味な私ですら、地元のきんぴらごぼうはキツかった。大人たちもさすがにきんぴらごぼうには醤油はかけなかった。もともとガツンと醤油が効いていたからである。素材の味などはみじんも感じられず、水分が抜けきっているためか食感も非常に硬く、食べると異常に喉が渇く。見た目も不健康にどす黒い。嫌いなおかずナンバースリーには入っていたと思う。ちなみに塩鮭も無理だった。あれはナメクジを瞬殺できる塩辛さだった。私の地元はどうなっているのだ。

ところがどっこい、時を経て今ではきんぴらごぼうは我が家の定番おかず。そして私の酒のつまみでもある。大人になってからは普通のしょっぱすぎないきんぴらごぼうの味を知り、地元のやつは大幅にチューニングが狂っていたと判明。それでも私の心に刻まれた傷は深かったが、料理雑誌で「塩きんぴら」なるレシピと出会ってから、私ときんぴらごぼうとの関係は激変した。いや、そんな大げさな話ではないのだが。

塩と昆布とごま油。そしてみりんを多めに使って「丸い味」を作る

今日はそんな塩きんぴらを作った。家族のおかず兼、私のおつまみである。なので分量がやや多めかもしれないが、最初にざっとレシピを記させていただく。過去の悲しいトラウマから醤油は使わない。代わりに使うのは塩昆布と塩である。塩昆布は大変優秀な調味料。何なら塩は使わず塩昆布だけでもいいくらい。これでトゲトゲに尖ったしょっぱさではなく、丸くてうまみのあるきんぴらにするのだ。ごま油の風味も引き立つ。お好みでさらに炒りごまを振ってもいいだろう。

材料分量
ごぼう150〜200グラムくらい
ニンジン200〜250グラムくらい
塩昆布3本指でひとつかみくらい
みりん大さじ2+大さじ1〜2くらい
砂糖大さじ1
小さじ1/2くらい

    【塩きんぴらごぼうの作り方】

  1. ごぼうとニンジンを千切りにする
  2. ごぼうは水にさらす
  3. ごま油を引いたフライパンにごぼう&ニンジンを投入
  4. 砂糖、塩昆布、みりんを投入
  5. 7〜8分くらい炒めたら塩を少量投入
  6. みりんを追加
  7. 程よく水気が飛んだら完成

    【ポイント】

  • ごぼうとニンジンはなるべく細かく千切りにする。スライサーおすすめ
  • ごぼうとニンジンの分量は1:1ではなく、ややニンジン多めに
  • この分量で作る場合は大きめ&やや深めのフライパンがいい
  • 塩昆布はマスト。一方で塩はほんの少しかナシでもいい
  • 最後にみりんを足した後は炒めすぎず、うるおいを残す

ごぼうを千切りにする。これが最大の難所

子供の頃に食べたきんぴらごぼうは、ごぼうがやや太めだった。やたらと硬いし、割り箸みたいだなと思った記憶がある。ポリポリというよりはバリバリ、ガリガリした食感で、噛むごとに芯まで染み込んだ濃口醤油そのものの味が口に広がる。喉が水を欲する。ウッ、アタマが。

だから私は、なるべく細かく切る。あの頃を思い出したくないのだ。それに細い方が食べやすい。理想は刺身のツマくらいの細さである。

ニンジンは千切りスライサーを使えば問題ない。問題はごぼう。我が家の千切りスライサーだと仕上がり幅が細いためか(おそらく大根のツマ用)、ゴリラのような力でスライスしなくてはならず、非力な私は非常に疲れる。またごぼうが短くなってくると、勢い余って指を千切りしてしまいそうで恐ろしい。別のスライサーを買い求めた方がよいのだろうか。

ともあれ私は普通のスライサーでまず薄切りにしてから、それを包丁で千切りにしている。これならあまり危なくないし、アライグマ程度の力で細かめな千切りが可能。ただ、面倒である。

今回は泥付きごぼうを使った。洗いごぼうならこんなにガリガリ皮を削らなくていいが、泥付きはしっかりめに削らないと土の匂いがきつい。塩きんぴらだと醤油で中和できないから仕方ないのだ。栄養素のことはあまり考えてはいけない
長いままだとスライスしにくいので適当な長さにカットする。また先っちょの細いところもスライサーにかけにくいので、これは別口で包丁スライスする
左が普通のスライサー。ただ薄く切るやつだ。右は千切りスライサー。薄く細かく切るやつだ。ごぼうは硬いので普通のスライサーを使う
もくもくとスライスしていく。スライサーはやや下向きに持ち、先端をまな板など滑りにくいものに当てながらやるといい
今回はスライサーに対し、ごぼうは30度くらい角度を付けてスライスした。ごぼうが太めだったらもう少し起こせるのでスライスしやすくなる。角度を寝かせると指スライスしやすくなるので注意
楕円形にスライスされたごぼうたち。長径は3センチ弱くらい。このままでは千切りしにくいので整列させる
整列完了。縦向きにして数枚ずつくらい重ねて並べる。縦になっていればだいたいOKである
ひたすら千切りしていく。この日はあまり時間がなかったので雑。もっと細かく切りたいところ
千切りごぼうを水に3分くらいさらす。ただの水でもいいが、酢水の方が白っぽく仕上がって見栄えが良くなるらしい

食材を切ってしまえば、あとは調味料を投入して炒めるだけ

ニンジンの方は千切りスライサーを使う。私はサッと洗ったニンジンをそのまま千切りにする。皮は剥かない方が栄養価的に良いと聞いたからではなく、単に面倒だからだ。ごぼうの千切りでもう疲れているのだ。そしてニンジンはごぼうよりもやや多めがいい。その方が柔らかい味になる気がする。

スライサー関係はいろんな料理で使うし、時短になるのでおすすめ。ただ、前述の通り指スライスには十分注意されたし。もしやってしまった場合は、患部を水でよく洗った後(しみる)、キッチンペーパーなどでギュッと押さえて止血(止まるまで時間がかかる)。その後キズパワーパッド的なやつを貼り、その上から防水タイプのばんそうこうを重ね貼り。数日そのままというのが治りが早かった。もう2度と経験したくない。

話を戻すとあとは炒めるだけ。食材を切ってしまえばゴールは近いのだ。ごま油を引いたフライパン(テフロンタイプが良い)にごぼうとニンジンを入れ、砂糖・塩昆布・みりんを加えてしんなりするまで強め中火で炒める。テフロンなら軽くまぜまぜしていれば焦げ付くようなことはほぼない。最後の方に塩を加え、仕上げにみりんを煮切って全体になじませ完成。

ごま油大さじ1をフライパンで熱し、ごぼうを投入。よく水を切っておかないと油が跳ねて危険。この時も元気よく跳ねた。ニンジンが先の方が良かった
続いてニンジンも投入。直径28センチのフライパンがパンパンである。しかし、ごぼうもニンジンも細千切りなので火の通りは比較的早いのだ
砂糖を大さじ1投入。我が家では上白糖ではなく、てんさい糖を使っている。上白糖は甘みが強い気がするので、もっと少なめがいいかもしれない
塩昆布を3本指でひとつまみ投入。コストを気にしないなら塩昆布をもっと多くして、塩を減らすor塩をナシにするでもOK
みりんを大さじ2
火加減は強めの中火。みりんの水気がほぼなくなり、全体的にしんなりするまで炒める。焦げないようにまぜまぜしながら
塩を小さじ1/2くらいを投入。これはごぼう&ニンジンの量、塩昆布の量に合わせて慎重に。好みや場合によっては入れなくてOKなので、塩投入前に味見をおすすめ
ごぼうたちを片側に寄せ、その反対側にフライパンをやや傾けて、みりん大さじ1〜2くらいをアバウトに投入。これでカラカラ気味なごぼうたちにうるおいを出すのだ
フライパンを傾けたままみりんを沸騰させて煮切り、全体的になじませる。その後は炒めすぎず、適度に水分を残してフィニッシュ
その時に食べない分はガラスケースに入れ、冷ましてから冷蔵庫へ。ジップロックなどに入れて冷凍してもいい

1日で食べきる量ではないので、我が家では3日くらいかけて消化する。酒のおつまみになるし、副菜にもなるし、ご飯に乗っけて食べてもウマい。特に卵かけご飯に合う。万能おかずだ。

小坊主の頃にイヤイヤ食べていた、あの生醤油を固体化したような喉に悪そうなきんぴらごぼうではない。まろやかで甘みがあり、塩昆布のうま味もあり、トゲトゲ感のない優しい味。酒のつまみはしょっぱい方が好まれがちだが、それで乾いた喉を酒でうるおすのはデンジャラスだ。私も40代である。このくらい優しい味のおつまみの方がいいだろう。